【完結】イケメンモデルの幼なじみと、秘密の同居生活、はじめました。
『彼女役』
 北斗の部屋のソファに、美波はちょこんと腰を下ろした。
 どうにも緊張する。
 北斗の部屋はあまり広くない。美波の家で、空いていた部屋で、それまで物置に使っていたくらいなのだから。
 でもデスク、チェア、ベッド、そして小さなソファもある。北斗のお母さんたちが「お世話になるので、家具はこちらで準備します」と用意してくれたもの。
 部屋が狭いので、ソファも小さめ。
 つまり、二人で座ると、かなり近づくことになってしまう。
 よって、美波はここに座ると妙に緊張してしまうのだった。
 それはともかく、北斗の話は改めてはじまった。北斗の手には、雑誌がある。
 【スターライト ティーンズ】だ。北斗は流石に自分で出演しているのだから、紙の雑誌も持っているようだ。
「実はちょっとやっかいなことになっちまって……」
「やっかいなこと?」
 美波は制服のスカートの上に手を置きながら、聞き返した。
 北斗の顔を見て、あれ、と思う。
 美波に話があると言った割には、言いづらい、というような顔をしていたものだから。
 でも、少しためらいつつ北斗が切り出した内容で、その言いづらそうだった理由を知る。
「んー……あの撮影のあと……、向坂に、告白、されて、さ……」
 どきんっと、美波の心臓が跳ねた。
 次に、ドッドッと速く鼓動をはじめてしまったけれど、それはずいぶん冷たい感覚がした。
 むしろ気持ち悪くすらある。
 告白。
 トップモデルで、イケメンで、陸上部のエースでまである北斗。
 モテないはずがないし、告白だって、今までされたことがないはずはないだろう。
 でも、実際に聞いてしまえば。
 しかも。
「向坂……さん、が……」
 相手は聖羅だというのだ。
 美波はぼうっと、その名前を繰り返した。
 北斗と同じ、トップモデルで抜群の美少女。
 その聖羅に告白された、なんて。
「確か、2回会ってるよな。それで、前回のコレ……」
 そこで北斗は雑誌を開いた。散漫にぱらぱらめくる。
「デート特集で恋人役になって……多分、それのせいでだと思うんだけど」
 美波はごくっとつばを飲んでいた。
 それはそうだろう。
 だって、恋人役なのだ。
 写真の二人は幸せそうだった。
 そしてこの『告白された』という内容からするに、聖羅のほうからは、本当に北斗のことが好きだったのだろう。だからこの笑顔なのだろう。
 美波の胸が、ずきっと痛む。
 この写真。
 北斗からはわからないが、半分くらいは、『本当のこと』だったのではないか、と思ってしまって。
「そ、それで……北斗、は?」
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