【完結】イケメンモデルの幼なじみと、秘密の同居生活、はじめました。
 美波はばくばくする心臓を抱えつつ、聞き返した。
 でも幸い、なのか。北斗はしれっと言った。
「断った」
 一瞬、美波の意識は空白になった。
 断った……。
 考えるまでもなかったのに。告白を断った、つまり、振ったということだ。
 美波はぼうっとしてしまう。
 心の中まで、無になってしまったように感じた。
 ほっとした気持ちがあるのは確かなように思った。
 でも、喜んでいいのか、それともほかの気持ちを覚えていいのかわからない。
 ゆえに、なにも言えなかった。
 美波のそれをどう思ったのか、北斗は一人で話を続けた。
「それで……、一応、振ったわけだから、次の撮影が困ったことになっちまって」
 次の撮影。
 美波は、まだぼうっとしつつ、北斗が示した雑誌のページを見た。
 そこには『北斗クンがチェックしちゃう! 彼女にしたい子ポイント!』という写真とあおり文句が載っている。
 写真は北斗だった。
 女の子は写っていない。
 つまり、まだ決まっていないとか、そういうことなのかもしれない。
 美波がそれを見ているうちにも、北斗の説明は続いていった。
「コレ、デート特集をした流れで、向坂と組む予定だったんだ。でも……」
 やっと美波にまともな思考が戻ってきつつあった。
 なので想像することができた。
 告白した、それを振ったという仲で、こんな撮影。
 きっと辛いだろう。
 北斗も、それから多分、聖羅も。
「……だから、彼女役が必要なんだけど、モデル界隈のやつだとちょっと困るんだ。ほら、向坂とも付き合いあるだろ。なんかこう、やっかまれたりしそうで……悪いなって」
 その言葉で、北斗の説明はすべてだった。
 しかし美波は仰天してしまう。
 彼女役、なんて、つまり自分がモデルになるということではないか。
 それは彼女の振りをするよりおおごとである。
「えっ、無理、無理だよ! モデルなんてできないよ! そんなかわいくないし!」
 美波は手を持ち上げ、ぶんぶんと振っていた。
 モデルなんてできるはずがない。そんな美少女なわけがない。トップモデルの聖羅と比べれば、一目瞭然ではないか。
 だけど北斗はやはり、しれっと言った。
「別に超・美少女じゃなくていい。ポーズも難しくない。だって、後ろ姿しか写らない予定だから」
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