元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「もう少し優しくしてくれたら平気だと思うの。だから」

 ――触れてはいけなかったのだ、というような顔はやめてほしい。

 その言葉は言えずに喉奥へ落ちていく。

「……私からしてみてもいい?」

 代わりにそう言って、シュクルがしたように顔を寄せた。

「動かないでね」

「……わかった」

 わからない、と言い続けてきたシュクルが初めてそう言うのを聞いた気がした。

 少しおかしくなって笑うと、視界の隅で尻尾が落ち着かなげに動く。

 ティアリーゼは更に距離を近付け、自分の額をシュクルの額に押し当てた。

 角だというそれは硬くて冷たい。痛まない程度にこすり付ける。

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