元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「そうね、少しの間だけここを離れることになるわ」

「ひとりで戻れるのならいいが」

「大丈夫よ。これでも私、もともと勇者だし。自分の身くらい自分で守れるわ」

「ならばいい」

(てっきり寂しがるかと思ったけど――)

 意外に思ったティアリーゼは、視線を下げてすぐに頬を緩めた。

 いつもティアリーゼの側にいるときは忙しなく動く尻尾が、今は落ち込んだようにへたっている。

 平気な顔をしていても、内心穏やかではないのだろう。

(戻ってこいと言われたのだから、もうシュクルの側に帰ってくる必要はない。だけど、私はもっとこの人たちの側で生きてみたい……)

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