元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「お久し振りです、お兄様。ひと月振り……いえ、もう少しでしょうか」

「……戻ってきて言うことがそれか?」

 兄の声に苦いものが混ざる。

「てっきり罵られるのかと思っていた」

「……やっぱりお兄様も知っていたのですね。『勇者』の真実を」

「当たり前だ」

(……そう。当たり前なのね)

 兄は知っていて、妹は教えられなかった。

 本当に必要とされてきたのがどちらなのか、改めて思い知る。

 勇者ではないからと言われていたとき、兄はどんな思いをしていたのだろうと思っていた。だが、本当に周りから同情の視線を受けていたのはティアリーゼの方。

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