元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 そう言った兄と目が合う。

 その瞬間、ティアリーゼはぞくりとしたものを感じていた。

「当初の目的通り、魔王を殺してこい」

 しばらく、ティアリーゼは答えなかった。

 そう言われることをどこかで予想していたのかもしれない。

「……私、あちらで聞きました。この国のもうひとつの歴史を」

 エドワードの言葉を承諾することも拒絶することもなく、別の話題に移す。

「人間がこの大陸を我が物にしていた時代はないそうですね。タルツも、彼らにとっては生まれて間もない幼い国だとか」

「そこまで奴らと話をしていたのか」

< 141 / 484 >

この作品をシェア

pagetop