元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「私が生きていることを利用するつもりなら、あの人を殺すことじゃなく、人間と亜人とが共存するためにどうするべきか、そちらの方向で考えるべきです。それならば、私も人間の味方である『勇者』として『魔王』と向き合いましょう」

 きっぱり言い切ると、ティアリーゼはその勢いのまま部屋を出ようとした。

 これ以上話す意味はないだろうと判断してのことだったが、エドワードがそれを止める。

「俺はお前が嫌いだよ、ティアリーゼ」

 近付いてきた兄の手が、ティアリーゼの髪に触れた。

 そんなふうに触れられたのは初めてのことで、今の今まで感じていた怒りが消えていく。

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