元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「いんや! むしろいい思いならしましたよ。子供が魚の塩焼きを分けてくれたんです」

「……だったらよかったわ」

 この国の人間のどれほどが亜人を疎んでいるのか、ティアリーゼは知らない。気にしない人間もいるから、街で過ごす者もいるのだろう。しかし、確実に言えるのはゼロではないということだった。

(私が人間と亜人を繋ぐ架け橋になれたなら。……そうしたら、もう一度自分を『勇者』だと思ってもいいかしら)

 飛び上がったカラスの背に掴まり、ぬるい風を感じる。

 ――唯一魔王と対等に渡り合える者を勇者と呼ぶ。シュクルは変わった魔王ではあるが、そうであることに違いはない。

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