元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 今まではなんとなくで接し、過ごしてきた時間を、これからは見直す必要がありそうだった。



***



 ティアリーゼがシュクルのもとへ戻ったのは、もう陽も暮れる頃だった。

 お喋りなカラスによる寄り道が主な原因である。

 初めてここへ来たときとは違う気持ちで城を見上げた。相変わらず荘厳で美しいが、あのときに感じた激しい思いはない。

(人間を傷付ける魔王なんていなかったんだものね)

 今もまた仕事をしているのだろうか――。

 そんなことを考えながら、今やすっかり馴染んでしまった自分の部屋へと向かう。

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