元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 四百年、ひとりぼっちだった亜人の魔王。人間を傷付け襲うどころか、ずっと寂しく生きてきただけ。

 ただ触れただけでこうまで懐かれたことにはもう驚かない。

「……私、あなたに出会うために勇者として育てられたのかもしれないわ」

「難しい。勇者として育てられたのは出会うためでなく、殺すためだ」

「そうだけど、そうじゃないの」

(供物にしてくれてありがとうって、この間言っておけばよかった)

 ティアリーゼもシュクルを抱き締める。

 もっとシュクルが上手に気持ちを話せるようになったら。そしてティアリーゼがその気持ちを恥ずかしがらずに受け止められるようになったら。

< 191 / 484 >

この作品をシェア

pagetop