元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 ティアリーゼが笑うと、シュクルは微かに目を丸くした。つられたようにうっすら微笑むのを、キッカはきっと嬉しく思っただろう。表情が仮面に隠れていようと、ティアリーゼにはわかるような気がした。

 温かい空気が三人の間に流れたとき、ふとシュクルが顔を上げる。

 やや緊張をはらんだその動作に違和感を覚えた。

 その瞬間、遠くから悲鳴が響き渡る。

「ねえ、今の……」

「助けを求める声だ。行かねぇと!」

「クゥクゥ」

 シュクルが呼んだときにはもう、キッカが腕を翼に変え、飛び立っていた。

「私たちも行きましょう」

「……わかった」

< 207 / 484 >

この作品をシェア

pagetop