元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 だが、もう彼らが単なる獣ではないことを知っている。

 同じ人であることを知った今、人を人とも思わぬ残酷な所業に感じるのは嫌悪よりも激しい怒りと絶望。

(彼らが私と同じ人間だなんて――)

「シュシュ、お前は嫁さん連れて逃げな。俺は俺の一族への屈辱を晴らす義務がある」

「そうだな」

「待ってください、あなたを置いていけません!」

 言われた通りにティアリーゼを連れていこうとしたシュクルの手を払い、キッカの方に向き直る。

 キッカはもうふたりを見ていなかった。

 仮面の隙間から覗く鋭い眼差しは、まさしく鷹のそれ。

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