元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 森や平野で耳にしたことのある、つんざくような鷹の鳴き声が突き刺さるように響く。

 離れてはいけない――と思うティアリーゼを強引に引っ張り、シュクルは駆け出した。意外なほど強い力にはティアリーゼも抗えず、その場を立ち去ることになってしまう。

 シュクルは振り返ることなくまっすぐ城へ戻った。

 トトに事態を告げ、すぐ対処に当たらせる。

 自分のするべきことを見つけられずに立ち尽くすティアリーゼは、ただ、ことの成り行きを見守るだけ。

 シュクルがティアリーゼの真っ青な顔色に気付くまで、少し時間がかかった。

「ティアリーゼ」

「あの人を置いて来てしまったわ……」

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