元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「私にくちばしはない」

「ったく、ぴりぴりすんなって」

 ふ、と風が吹き抜ける。その一瞬の間に、キッカの腕は鳥の翼へと変わっていた。

「食い殺される前に帰るわ。今日は楽しかったよ」

「キッカさん……!」

「シュシュのこと、よろしくなー」

 勢いよく飛び上がったことで声が遠ざかっていく。

 そのまま鷹の姿になって飛んで行ったキッカを見送ろうとしたが。

「……っ!」

 抱き締めてくるシュクルの腕の力が強くなった。

 顎を掴まれ、キッカを見送れないよう明後日の方を向かされる。

「い、痛いわ」

「本当に嫌な気分だ。……私のティアリーゼにあんな真似をすると思わなかった」

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