元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「あ……あれはなに……? 顔をこすりつけられただけじゃないの……?」

「それが問題だという話をしている」

「そんなことを言われてもわからな――」

(……あ)

 こつ、とシュクルが額を押し当ててきたことですべてを悟る。

 キッカのあれも、シュクルと同じく気に入った相手にする行為なのではないか、と。

「なんとなくわかったわ。でも、あなたとは違う意味だと思うの」

「……お前はどうする」

「なに?」

「私はお前になにもされない」

 ひどく押し殺した声は、シュクルのものと思えなかった。

 いつも淡々と抑揚のない声で話していたくせに、今ははっきりと感情が見て取れる。

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