元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 どんな求愛行動をされても受け止める、と態度で表しているようでもあった。

(しなきゃだめかしら……本当に……)

 ティアリーゼにそんな経験があるはずなどない。

 どういうものか知識としてはわかっているし、昔読んだ物語では天にも昇るような気持ちになるだとか、なんだとか書いていたのも覚えているが。

「ティアリーゼ」

 急かすように名を呼ばれ、腹をくくる。

 ティアリーゼはゆっくり深呼吸すると、シュクルの肩に手を添えた。

「……頑張るから、そのまま動かないでいてね」

「頑張る?」

「いいから、じっとしていて」

(まさか、こんな日が来るなんて)

< 230 / 484 >

この作品をシェア

pagetop