元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 自分から異性に口付けるなんてはしたないのでは――。

 そんな思いを拭いきれないまま、背伸びをする。

 相手はシュクルで、人間ではない。だったら変に恥ずかしがる必要もないだろうと思うのに、やはりどうしても意識してしまう。

 唇と唇が触れ合う本当にぎりぎりのところまで近付いた。

 あとほんの少しの距離をどうしても詰められずにいると――。

「なにをしているのかわからない」

「――っ!」

 シュクルが喋ったせいで、その僅かの距離が重なってしまった。

 たった一瞬、触れるだけ。

 それでも確かに今、ティアリーゼはシュクルとキスをした。

「い、今終わったわ」

「なにが?」

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