元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「シュクル・クシュクルと言う。皆は私を白蜥(はくせき)の魔王と呼ぶ」
「……くしゅくしゅ?」
「違う」
思わず尋ねてしまったのは、聞き間違えたのかと思ったからだった。
喉奥から息だけを吐くような、蛇の鳴き声にも似た発音。人らしからぬ音を名前としているのは、亜人だからなのだろう。
(……そっか、亜人)
改めて目の前の魔王――もとい、シュクルを観察してみた。
氷をそのまま人の形にすれば、この男の姿が作られるのだろう。そんなふうに錯覚するほど、冷ややかな印象を与えてくる。それは雪を思わせる銀髪のせいかもしれないし、薄くも濃くもない奇妙な色の青い瞳のせいかもしれない。