元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 どんなに忠告しようと、シュクルはティアリーゼと生きる刹那を選ぶだろう。失った後で永遠にも近い寂しさを抱えることになろうと。

 自分とは似て非なる別の生き物なのだと、キッカは改めて思ってしまった。

 恋を知っているか知らないか。それだけでこんなにも眩しい存在になれることを羨ましくも思う。

「やっと楽しい人生になりそうじゃん。よかったな」

「少しだけクゥクゥのおかげ」

「少しってなんだよ」

 キッカが小突くと、シュクルはくすぐったそうに頬を緩めた。

 そんな表情もまたティアリーゼによって引き出されたもの。それがわかっていたから、キッカはもうなにも言わなかった。



◇◇◇



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