元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 一方、ティアリーゼは親しく話す相手もなく毎日をひとりで過ごしていた。

 もっとも、正確に言えばひとりではない。今も結婚式のドレスを作るために、何人もの針子たちが集まっている。

 しかしどうにも空気が重かった。

(なにか喋った方がいいのかしら……)

「……あの」

 ついに耐えきれず声を発すると、一気に緊張が走った。十人以上も人がいるというのに、誰もティアリーゼと目を合わせようとしない。

 視線を動かせば、皆不自然に顔を背けてしまう。

(結婚をよく思われていない……ってところかもしれないわね)

 下手に声をかけない方がいいかもしれない、と口を閉ざすと、再び長い沈黙が下りた。

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