元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「ティアリーゼ様は毎晩泣いていらっしゃると聞きました」

「お部屋の前を通るとすすり泣きが聞こえたという話も……」

 思っていたよりもずっとおかしな方向に話が広がっていただけでなく、彼女たちに事実だと思われている。

 これは一大事だった。

「訂正させてちょうだい。そもそも魔王も含めて、あなたたちが亜人と呼ぶ人たちは決してひどいことをするような存在じゃないわ」

 ティアリーゼは自分の見てきたものを丁寧に語る。

 お喋りなキッカのことも、人間に怯えていたメルチゥのことも、なにかと小言の多いトトのことも。もちろん、夫となるシュクルについても話した。

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