元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 することもなく過ごすのは息が詰まりそうで、こうして外に出たわけだが。

「……あ」

 花壇の端に小さなトカゲの姿を見つける。自然と、いずれ夫となる人のことを思い出していた。

(元気にしていたらいいんだけど。寂しがっていそうだわ)

 しゅうしゅうというあの鳴き声を久しく聞いていない。

 忘れようとしていた寂しさが込み上げて、その場に立ち尽くす。

 黒っぽい色のトカゲはしゅるしゅると地面を這い、ティアリーゼの足元まで近付いた。

 なんとなく目で追って、ふと気付く。

(そういえば、トカゲに角ってないわよね)

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