元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 だが、相手は亜人であり、それらの生き物を統べる魔王である。もとより人間と相容れる存在ではない。

 本当の理由を告げるべきか、一瞬だけ悩む。が、結局真実を口にした。

「あなたを殺しに来たの」

「どのように?」

 少し考えたのち、彼は不思議そうに尋ねた。

(どのようにって……)

 正直に言うと、ここで怒りを買い、殺されることを覚悟していた。この様子では命を奪うどころか、質問責めにされる可能性の方が高い。

 シュクルから感じるのは、純粋な疑問。軽く小首を傾げながら尾を揺らす姿は、確かに人よりも獣に近い。

「たぶん、剣で刺すんじゃないかしら」

「なるほど」

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