元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 それだけを願いながら、乱暴な扱いに抵抗した。

(お願い、来ないで)

 どんなに願っても、ティアリーゼはシュクルが来てしまうことを知っている。

 そして、そうなれば殺されてしまうだろうことも――。

(私を助けようと思わないで……)



***



 ティアリーゼは、城下町の広場に引きずり出された。

 外は夜だったらしく、満月が煌々と辺りを照らしている。

 その柔らかい光の下にたたずむひとりの影を見た。

(……シュクル)

 懐かしいとさえ思えるほど共に過ごした魔王は、ティアリーゼが予想した通りに来てしまった。

「本当に来たな」

「いかにも」

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