元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 エドワードも周囲の兵たちも黙り込んだ中、言葉を引き継いだのは意外にもシュクルだった。

「私もティアリーゼが好きだ」

 春の日差しを思わせる、柔らかく優しい声がしんと静まり返った空気を震わせる。

「誰も必要としていなかった私に触れてくれた。……本当に温かい手だった」

 そのときのことを思い出したのか、ゆらりと白い尻尾が動く。

「なにも知らない私に多くを教えてくれた。こんな私でも、誰かを大切に……愛おしく思う気持ちがあるのだと」

「シュクル……」

 自分の気持ちをこんなにもはっきり語れていることが、なにも知らなかったというシュクルの成長だった。

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