元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 なぜそんな声を出すのか理解する前に足がもつれ、その場に転んでしまう。

 地面に倒れ込む前にシュクルの手で抱き留められるも、その頃には背中の熱がじくじくと痛みに変わっていた。

(ああ、また……)

 ティアリーゼは振り返る。霞んだ視界に映ったのは、弓を構える兵の姿。

「私……学習しないわね……」

「喋るな」

 シュクルがしっかりとティアリーゼを抱き締める。

 いつもはすぐに温かいと感じる腕の中が、今はいつまで経っても温かくならない。

 否、ティアリーゼの身体が急速に冷えていっている。

「なぜ……なぜ、ティアリーゼを」

 激しく戸惑うシュクルの声がぼんやりと聞こえる。

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