元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 思わずティアリーゼはそう言っていた。

 だが、言ったときにはもう、シュクルの腕の中から放り出されている。

(だめ――)

 目の前にいたシュクルの身体が――溶けた。

 ティアリーゼは以前にもこれを見ている。

 ひとりは金鷹の魔王、キッカ。もうひとりはティアリーゼを運んでくれたカラスの亜人。

 彼らが人の形から鳥の形へ変わるときと同じことが、今、目の前で起きていた。

(シュクル、あなた……)

 シュクルが人ならざるものに成り果てる。

 月光を弾く白銀の鱗。ティアリーゼの胴体よりも太い腕の先には、人間の身体などやすやすと引き裂けそうな鋭い爪があった。

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