元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 ご機嫌に揺れていた尾も今は長く太く変わっている。それもまた鱗に覆われていた。

 再度、シュクルは咆哮を上げる。

 天を轟かせるその声を発したのは、物語でしか聞いたことのない伝説上の生き物。

「りゅ……竜……?」

 誰かが震える声で呟いた。

 白い鱗と紫の角を持つ竜の姿がそこにある。

(トカゲじゃ……なかったの……)

 地に伏したままそう思ったティアリーゼは、巻き上がった熱風にひくりと喉を鳴らした。

 先ほどまで咆哮を上げていた喉から、燃え盛る炎が吐き出される。シュクルを囲んでいた兵の一部が、悲鳴を上げる間もなく消し炭になった。

(待って……)

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