元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 最初こそ恐怖し、逃げまどっていたが、やがて反撃に転じ始めた。

 投げられた槍の先端がシュクルの胴体に突き刺さる。遠くから放たれた矢が、コウモリの羽に似た翼に穴を開けていく。

 傷付けられるたび、シュクルは身悶えした。

 攻撃こそ激しくとも呆気なく傷付くその姿を見て、生き残った兵たちが勢いを増していく。自分の鱗を柔らかいと言っていたシュクルの言葉を思い出し、ティアリーゼはかすれた声で叫んだ。

「やめて……傷付けないで……!」

 喉奥で消えた声は響かない。

 シュクルを傷付けた者たちはひとり残らず炎か爪か、あるいは牙の餌食となった。

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