元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 今もシュクルはティアリーゼを目の前で失いかけて傷付いている。

「シュクル」

 いつの間にかもう兵たちの姿はほとんどなくなっていた。ばらばらになった肉片につまずき、込み上げそうになるものをなんとか飲み込む。

 動いたおかげで矢による痛みが薄れ、麻痺していた感覚が戻りかけていた。

(意識だけは失わない。私が気絶したら、誰もあの人を止められなくなる)

「シュクル」

 ティアリーゼは荒ぶる魔王の名を呼ぶが、届かない。

 シュクルはティアリーゼ以外に唯一残していた人間のもとへ向かおうとしていた。

< 373 / 484 >

この作品をシェア

pagetop