元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 こんなふうに笑う人だとは知らず、また胸が温かい思いで満たされていった。

 その気持ちをどう伝えればいいかわからなかったティアリーゼは、シュクルの肩口を掴んで顔を寄せる。

「ティア――」

「あなたが角を押し付けたがる理由が、今、わかったわ」

 そう言って唇を重ねる。

 ティアリーゼからの求愛行動に、シュクルの尻尾がぴんと立った。驚いた猫のようでもあったが、キスをするティアリーゼは気付かない。

 以前はあんなに求めてきたくせに、シュクルの応え方はぎこちなかった。

 おずおずとティアリーゼの唇をついばみ、やはり軽く甘噛みする。

「大好きよ、シュクル」

< 395 / 484 >

この作品をシェア

pagetop