元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「ティアリーゼ様、席を立ってはいけません」



 興奮気味だったティアリーゼは慌てて椅子に戻る。

 なんとなく納得いかない思いを胸に、まだ残っていた菓子をちょっとずつ食べ始めた。



(これ、クルミがはいってる。こっちはジャム……。……おいしいのにどうして、そういっちゃだめなのかなあ)



 菓子は期待した通りとてもおいしい。

 おいしいが――なにか、もやもやしたものが胸に渦巻いている。



(あたし、おかしはおいしいっていいながら、いっしょにいるひととたのしくたべたいな)



 それを口に出すことが許されないのはわかっていた。

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