元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 魔王の城と言うのだからもっとおどろおどろしい場所だとばかり思っていたが、とてもそうは見えない美しい場所だった。

 思えば、最初に外観を見たときも美しいと感じた記憶がある。

 壁にも天井にも精巧な装飾が掘られ、開けた場所には絵が飾ってあることもあった。隅々まで掃除が行き届いているらしく、埃が積もっているようなところはない。

 明かりとして壁にかけられた燭台にはすべて新しいろうそくが立てられており、もし今が夜だったら心強い照明となるだろうことを思わせた。

 足を動かすたびにかつんと石の音が響く。聞こえるのはティアリーゼの足音ばかりで、ほかの物音は聞こえない。

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