元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
(近付かない方がいい、のよね?)

 話をしたいだけだったティアリーゼは、それ以上警戒させないように後ろへ一歩下がる。

「ちょっと散歩をしたかったの。できればこの城にいる人と話をしたくて」

「……人間が私たちとなにを話すつもりです?」

「世間話……とか……」

「…………本当に?」

「ここでおかしなことをするつもりはないわ。なにかしたって、こちらは私ひとりで、あなたには仲間がたくさんいるでしょう? すぐに捕まえられちゃうと思うの」

「それはそうかもしれませんが……」

 こくり、と息を呑んだのはティアリーゼか、それともネズミの亜人か。

 次に口を開いたのは亜人の方だった。

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