元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 メルチゥの後を続きながら、そんなふうに考える。

 勇者と呼ばれもてはやされ、自分には大きな役目があるのだと思っていたときには考えもしなかった亜人たちのこと。

 戸惑いが完全にないわけではない。だが、ティアリーゼは目にしたものを受け入れようと心に決めた。

 初めて入るシュクルの部屋は意外にも王らしいものだった。執務を行うと思われるテーブルに、柔らかそうなソファ。彼が本をたしなむようには思えないが、一応本棚もある。

(てっきりこの人のことだから、なにも置いていないのかと思った)

 机に向かうシュクルはまともに見える。普段のあのよくわからない人物とはとても思えない。

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