元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 その横に立って険しい顔をしているのは、やはり初対面の相手だった。シュクルやメルチゥと同じく亜人で、このふたりよりもずっと殺気立っている。

「今、王は忙しいんだが」

「忙しくない」

 即答するとシュクルは滑るようにティアリーゼの前へやってくる。相変わらず表情は硬いが、いつもより床を叩く尻尾の勢いが強い。

「私も会いたかった」

「……あなたに会いたくて来た、なんて一言も言ってないわよ」

「……違うのか」

「ち……違わない、けど」

 目に見えて落胆したのがわかり、慌てて否定する。

 また、シュクルは少し嬉しそうにはにかんだ。

(危ない。また流されてる)

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