元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 本格的に困り果てたティアリーゼの肩にシュクルが頭を預けた。

 さらり、と長い銀髪がティアリーゼの手に落ちる。

「……だからお前が好きだ」

(どうしてそういう結論になるの)

 今回もまたティアリーゼは諦める。

 雛だ、という言葉通り、シュクルは子供のように見えた。

 本人曰く四百年も生きており、この大陸を治める魔王でもあるのに。

(心からそう思っているのよね、きっと。この人のそういう正直さが憎めないんだわ)

 そよ、と風が吹き抜ける。

 しばらくふたりを静寂が包み込んだ。

 なにも話さず、ただ隣り合って寄り添っているだけなのに、不思議なほど心地良い時間。

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