元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 今までにもこんな距離で過ごしたことはあるのに、今になって突然意識し始めてしまう。

「あ、あなたがそこまで言う理由がわからないの。本当に……」

「私に触れた」

 以前と同じように答え、シュクルが顔を寄せる。

 なにをするつもりか察し、ティアリーゼの顔が真っ赤になった。

「ま、待って」

「待たない」

「シュクル――」

 呼んだ声は、頼りなく風にさらわれた。

 思わず目を閉じたティアリーゼの――額にこつんという感触。

(…………ん?)

 ぐりぐり額に硬いものを押し当てられている。

 どうも思っていた甘い空気とは違うらしいと感じ、恐る恐る目を開けてみた。

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