見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
連絡がつかなくなってすぐに妊娠が判明したこと。
つわりが辛かったことや、妊娠中に太り過ぎてしまったという残念な事実も、ついでに。
出産を終えてから生活も一変し、慣れない育児は大変だったけれど、何気ない日常の中でたくさんの幸せを感じられた。
寝返りを打っただけで大騒ぎしたりして、勇哉の存在は私だけでなく家族みんなの笑顔を増やしてくれた。
「俺も、そこにいたかったな」
心からのひと言に、ずきりと胸が痛くなる。
なんて言ったら良いのか分からず口籠もった時、和哉さんが私の手を掴み、手の平の上に四角い箱をそっと乗せてきた。
「本当は、三年前の結衣の誕生日に渡すつもりだったんだ」
それはどう見てもリングケースで、私は勢いよく体を起こした。胸を高鳴らせながら蓋を開き、自然に「わぁ」と声が出た。
「和哉さん、これってもしかして」
「婚約指輪だ。受け取ってくれ」
緩くウェーブしたリングラインに、台座には美しくカットされたダイヤモンド。とっても綺麗で、しばし呼吸を忘れる。