見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
「パパ!」と勇哉が甘え声で小さな手を伸ばすと、和哉さんが「はい、お土産」と持っていた袋を私に差し出してきた。
中身は果物の詰め合わせで、受け取ると甘い香りが漂ってくる。
「わぁ。美味しそう! いつもありがとう」
「勇哉が好きそうなものを買ってきた。たくさん食べろよ」
「たくさんたべるー!」
和哉さんは満面の笑みで勇哉を抱っこして、私に目配せしてから歩き出した。
私も彼に並んで歩きながら、ベビーカーにつけてあるフックにかけたお土産の袋を見つめてこっそり笑みを浮かべる。
三週間前に会った時、勇哉が果物をよく食べるという話になった。きっとそれを覚えてくれていて、こうして買ってきてくれたのだろう。
駅の外に出て、また空を見上げる。雨はまだ降り出していないけれど、さっきよりも雲は暗く、進む足は自然と早くなる。
「そう言えば、電車で来るなんて珍しいね」
「色々と企んでて」
「企む?」
私の問いに彼はにやりと笑うだけで、その企みについては教えてくれず、「あ、そうだ」と何かを思い出したように改めて私を見た。