見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
私への用事も、もちろん和哉さんのことに関してだろうと予想できるけれど、自分からそれを言わない方がいいだろう。
和哉さんが記憶喪失を装っている以上、私も彼と繋がっていないように振る舞うのが自然だし、……下手に彼の話を持ち出したら、うっかり口を滑らせてしまいそう。
冷静な顔を装ったまま、こうなることが予測できていたのなら事前に話しておいてよと、心の中で和哉さんを恨めしく思う。
「話があって伺いました。……いえ、お願いと懺悔をしに来たと言った方が正しいかもしれませんね」
か細い声でそう告げた和哉さんのお母さんの顔は、昔よりやつれていて色も悪く、今にでも倒れてしまいそうに見える。
「立ち話もなんですし、もし良かったら、家の中でお話ししませんか? ちょうど今、家の方には誰も居ませんから」
和哉さんは迷うように視線を揺らしてから、申し訳なさそうに小さく頷く。
「お言葉に甘えさせてもらって良いかしら」
「はい。ちょっと待っていてください」
店のバッグヤードに向かって「圭人!」と声をかけると、クリップボード片手に「なんだよ、姉ちゃん」と圭人が姿を現す。