見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
気怠げな様子だったが、和哉さんのお母さんに気がつき、「いらっしゃいませ」と愛想良く挨拶をした。
「私、店番外れるから。……玄関からどうぞ。案内します」
用件を告げると、圭人は店の客じゃなかったのかとキョトンとする。
そして、和哉さんのお母さんからお辞儀されて、数秒後、目を大きくした。この品の良いご婦人が、和哉さんの母親だと察したのだろう。
店を出て、自宅玄関へと移動する。スリッパに履き替えてもらってから、「こちらへどうぞ」とリビングに案内した。
ダイニングテーブルのイスに座ると同時に、和哉さんのお母さんが深く息を吐いた。俯き加減の横顔から、疲労感が滲み出ている。
お茶の準備をしつつ、ポケットからこっそりスマホを取り出す。
「和哉さんのお母さんが来てるから、まだ帰ってこないで!」と急いで母にメッセージを送信した。
湯気の立ちのぼる湯呑み茶碗をトレーに乗せて、私はゆっくりと歩き出す。
「お茶です。どうぞ」
「ありがとう」
和哉さんのお母さんにお茶を出して、私は向かいの席に腰掛ける。
こうして向かい合って座ると、三年前のあの日のことが脳裏に色濃く蘇ってきて、心が重苦しくなっていく。