見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました

彼と気が合うかもしれないと思い始めた頃、和哉さんが縁談相手の女性に食事に誘われ、私が彼の偽りの恋人として役目を果たす時がやってきた。

予約が半年先まで埋まっているので有名な高級フレンチレストランへと、和哉さんと並んで足を踏み入れる。

和哉さんと一緒に選んだ薄紫色のワンピースでしっかり着飾って、高級感のあるお洒落なレストラン。

これがデートだったならと口惜しく感じつつ、私はとあるテーブルの前で足を止める。

六人くらいで囲むような大きなテーブルに、ショートカットで気の強そうな顔立ちの女性が、苛立った様子で紅茶を飲んでいた。

「お待たせしました」と和哉さんが声をかけた瞬間、弾かれたようにこちらへ顔をむけ、嬉しそうに微笑む。

しかし、彼の隣にいる私に目を止めた瞬間、別人のごとく大きく表情を歪め、「……あなた」と敵意むき出しの顔になる。


「待たせた上に女性連れだなんて、……和哉さん、私を試しているの?」


不機嫌さを隠さず、高圧的な空気を纏っている女性に、気持ちで負けそうになり、無意識に後ずさる。

しかし、そっと繋がれた大きな手が、私の足と心を引き止めた。

< 12 / 155 >

この作品をシェア

pagetop