見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました


「どうしてそんな嘘を吐いたんですか? 彼がそんな状態だったのなら、寄り添いたかったです。こんな私でも、励まし続けることくらいはできたかもしれないし」


私の言葉に、和哉さんのお母さんが弱々しく頷き、「ごめんなさい」と繰り返す。

もっと色々嫌味くさいことを言ってやりたいのに、今にでも泣き出しそうな姿があまりにも小さく、そして痛々しく見えて、何も言えなくなる。


「運転中の事故だったの。頭を強く打ったからか、一ヶ月くらい意識が戻らなくて、……気がついたのは、結衣さんと話をした数日前だったわ」


あの日の辛い記憶が蘇ってきて苦しげに息をつくと、和哉さんのお母さんはわずかに黙り込み、やがて言葉を選びながら再び話し出す。


「嘘をついてしまったのは、あの子が記憶を無くしてしまっていたから、……結衣さんを覚えていないなら、金城(かなしろ)グループのお嬢さんとの縁談が上手くいくかもと考えてしまったの」


あの女性の正体を知り、あぁやっぱり大企業の社長の御令嬢だったのかと息を吐く。

金城グループは通信会社として有名な大手企業だ。

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