見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
「……あの、和哉さんの記憶は、今もまだ?」
「えぇ。思い出せないままです」
「そ、そうですか」
記憶が戻ったことに、まったく気付いていないらしい。
和哉さんはどのタイミングで本当のことを話すのだろうか。
その辺りの話を後でしっかり聞かせてもらわないとと考えていると、和哉さんのお母さんが苦しげに息をついた。
「目覚めた直後から、和哉は精神的に不安定になってしまって、冷静沈着な子だったのに、時々暴れるようにも。金城さんのお嬢さんと会わせてからは余計ひどくなって、結婚なんてふざけるなって初めて怒鳴られたわ」
その時のことを思い出したのか、和哉さんお母さんは「あぁ」と苦しそうに目を閉じた。深呼吸し、少し間を置いてから話を続ける。
「誰かに怪我をさせるようなことはしないけど物に激しくあたって、自室や執務室がひどい状態で。そうかと思えば、ぼんやりとした様子で涙を流していたり」
「そんな状態が三年も続いているんですか?」
食い気味に問いかけると、和哉さんのお母さんが首肯した。
「……えぇ。まるで別人になってしまったようで、どう接したら良いのか分からなくなってしまうほど」