見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
そう言って、震える手で再び顔を覆う。
苦悩し弱りきった姿を見せられてしまうと、精神が不安定な振りを続けていると和哉さんに聞いた時、つい笑ってしまったことを申し訳なく思えてくる。
私も記憶を失っている和哉さんを見てはいるけれど、それは公園でのあの数分だけ。
記憶を取り戻した後は、それこそ私の記憶の中にある和哉さんそのままだ。
「和哉は繰り返し私に聞いてきました。俺は何か大切なことを忘れていないかと。理由が分からないままに涙を流して、喪失感に飲み込まれそうだと怯えるあの子に、……どうしても本当のことを言えなかった」
情緒不安定だった時の様子を知り、和哉さんの不安な気持ちを想像すると、胸が痛んだ。
「結衣さんのことを話せば、きっとあの子はあなたの元へ行くでしょう。そうしたら、あなたについた嘘がばれて、……私は和哉に嫌われてしまう。すべて自業自得だというのに、どうしてもあの子を失いたくなくて」
「それなら、どうして私のところに? 私だって、こんな話を聞いてしまったら気になります。……心配で彼に会いに行ってしまうかも」