見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
ぽつりと付け足した言葉に、和哉さんのお母さんが強く反応する。
同じように椅子から立ち上がり、膝の上にあったハンドバックが床に落ちても構わず、縋るように私の手を両手で掴んできた。
「結衣さん、和哉と会っていただけませんか? このままだと、本当にあの子を失ってしまいそうで。そんなことになったら、後悔してもしきれない」
「失うって、どういうことですか?」
「仕事に没頭している時だけは、生き生きとしてくれていたの。だけどつい最近、雨の中、傘もささずに町を彷徨っていたことがあって、秘書が見つけ出して家に連れ帰ってくれたのだけれど、その後、和哉が倒れてしまって」
「倒れた?」
雨の日に傘もささずに彷徨っていたというのは、彼が実家に来てくれた一週間前のあの日の出来事で間違いない。
夜に電話で話した時は元気そうだったけれど、本当は具合が悪かったのを私に隠していたのかもと動揺が広がる。
「すぐに意識を取り戻してくれたから良かったものの、食事をとろうとしても体が受け付けないみたいで、今もベッドで体を起こすのがやっとの状態なの。眠っている時はずっとうなされているし、起きていても何かうわごとを口にしていて、あの子の心も体も心配で」