見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
ベッドでぶつぶつと不穏めいた呪文を唱える和哉さんをつい想像し、笑ってしまいそうになるのを必死に堪えた。
違う。きっとそれはすべて和哉さんの演技だ。この一週間、彼とは何度もやりとりをしている。
電話で聞く声は常に元気そうだったし、メッセージが届く頻度も今思うと高かった。きっと、ものすごく暇だったのだろう。
「……和哉さん、食事をちゃんととれていないのですか?」
気になった点を改めて確認すると、再び和哉さんのお母さんは首を縦に振る。それを見て、「そこまでしなくても」と私は心の中で彼に小言を言う。
事故を起こした後から実家で暮らしていると、和哉さんから聞いてる。
「相手の出方次第だ」と言っていた言葉通り、この一週間、彼は食事をろくにとらず、自分の母親と人知れず我慢比べを続けていたのだろう。
そして、和哉さんのお母さんの方が堪えきれなくなって、私の所に来た。
「ずっと結衣さんを訪ねようと思っていたの。でもあんなひどいことを言っておいて、今更合わせる顔がなくて。虫のいい話なのはわかっています。けどどうか、あの子に会っていただけませんか?」