見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました

私を掴む手は震え続けていて、真っ直ぐに見つめてくる目は涙で潤んでいる。

どれだけ後悔し、そして強い覚悟の元に、私の所へ来てくれたのだろうか。


「和哉さんは記憶をなくされているのですよね。私のことを覚えていないのに、和哉さんと会ったところで力になれるかどうか」

「そばにいてくれるだけで良いんです。あなたがそばにいてくれたら、それだけであの子の心はきっと穏やかになる」


和哉さんのお母さんはそっと私から手を離し、流れ落ちた涙を指先で拭う。そして、ゆっくりと歩み寄ってきた。


「私が間違っていたわ。和哉が必要とするものこそ、ヤギサワにとって一番大切なものだったのよ。和哉も私たち夫婦も、あなたが必要なの。どうか、お願いします」


私が必要だと力強く響いた言葉に、胸がじんと熱くなる。おまけに深く頭まで下げられてしまうと、私まで泣きそうになる。


「……あ、あの……少し考えさせてください。ちょっと混乱してしまって」

「もちろんよ。……もし、和哉に会っていただけるなら、私に連絡をください。いつまでもお待ちしています」


和哉さんのお母さんは床からハンドバッグを拾い上げ、メモ帳とペンを取り出す。

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