見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
私に一礼してから車に乗り込もうとする和哉さんのお母さんをもう少し近くで見送るべく、一歩二歩と近寄っていったその時、「ママ!」と勇哉の声が響いた。
大きく体を向けると父と母、そして父に抱っこされ可愛らしく手を振っている勇哉がいた。
勇哉は地面に下ろしてもらった途端、私に向かって駆け寄ってくる。小さな体を受け止めるように、身を屈めて両手を広げた。
「お帰り」と言葉をかけてから両親をちらり見ると、タイミングが悪かったわねといった様子で気まずそうな顔をしていた。
私は意気込むように息を吸い込んでから勇哉と手を繋ぎ、和哉さんのお母さんへと振り返る。
和哉さんのお母さんは車に乗り込まず、目を大きくして勇哉をじっと見つめている。
「……和哉?」
ぽつりと呟き、唇を震わせながら、私へと視線を上らせる。
勇哉は和哉さんの子供の頃にそっくりらしく、一番近くで彼を見てきた母親が気づかぬわけはないだろう。
「まさか。……結衣さん、そんな」
よろよろとこちらに戻って来るが、私まであと三歩ほどの距離で、和哉さんのお母さんは両手で顔を覆ってその場に崩れ落ちた。